巨大ヒョウタンの作り方
一升瓶も裸足で逃げ出す、大きなヒョウタン、その名は「天下一」
巨大ヒョウタン

ヒョウタン3兄弟



 ここでは、「天下一」という品種の巨大ヒョウタンを栽培した時の様子を記録してあります。
 

また、品評会等で上級の評価をもらえる達人の業にはまだまだ及びませんが、それでもこんなのが採れる、という現実をご覧ください。今までで最大のものは、胴回り83cm、高さ52cmでした。申し訳ありませんが、ここでは千成ヒョウタンや中型ヒョウタン、普通の大ヒョウタンは扱いません。それらの作り方は、タネの袋や既刊本に書かれているからです。

また、小さいヒョウタンの収穫した実の利用法も扱わず、メモ程度の文章です。必要な方は既刊本をご覧ください。


1.準備

1.1. 播種

巨大ヒョウタンには、夏の強烈ギラギラ太陽光線と、肥料がたっぷり必要です。水はほどほどに。

 

そこで、1株当たり1.5mの余裕で植えるとすると、必要な株数がわかります。種1個からは1株しか芽が出ないので、余裕を持った種の入手が必要です。

なお、野菜の生産知識からか、種を一晩水に漬けておく人がいますが、逆に芽が出なくなりますので、厳禁です。





1.2.保温
 

苗の植え付け時期は細長い日本列島で複雑です。ここでは、南関東一円で3月末が限界で、ある程度の大きさに育った苗がゴールデンウィーク前半には植え付けできるようにします。


 

種を撒く6号土ポットに粒状過リン酸石灰と基肥も入れ、鮮魚運搬用の発泡スチロール箱に収納し、昼はポリ袋を少し開け、夜はポリ袋で覆う、というくらいの保温はしたいところです。

 

植え付けの1週間ほど前に、苗を植え付けるところをよく耕し、これでもかっ!というくらいに基肥を入れて畝を作っておきます。基肥には堆肥や牛糞を混ぜて有害ガスが出ないようにしておきます。過リン酸石灰や工場で製造されるものはたいていが酸性で、化成肥料も酸性なので、植え付けの1週間前に畝作りをするわけです。

 

畝作りが完了したら、苗の植え付け準備です。畑の土の温度を上げるために、2m幅黒ポリマルチを畝に敷いておきます。黒ポリマルチは幅2m×長さ200mのものが農具店やホームセンター、農協の売店で安価に手に入ります。都市住民向けの長さ50mも売っていますが、割高で少しもったいない感じもします。そして、「面倒だから」という理由でこれをしない人には、巨大ヒョウタンの栽培は無理です。  スイカやズッキーニやトマト作りの経験がある人は、比較的栽培が簡単に思えてきます。


1.3.土作り  

土作りとは、いろいろな定義がありますが、裸手で握ってみて、一旦は固まっても、押すと簡単に崩れるような感じで、半分近く堆肥が入っているものが良いです。ウチの家のある地区は、大昔、海底か海岸だったようで、畑から二枚貝の化石が出てきたことがありました。こういう土壌は、保水性が良いかわりに乾燥が遅い、という特徴があります。これに対しては、海岸に行って迷惑になりそうもないような場所から海砂をもらってきて、畑にしたいところで砂を混ぜ込みます。

 

山砂や川砂の方が良いのは分かり切っていますので、海砂には抵抗感がある、という方は、ホームセンターなどで、「バケツ一杯198円」などの販促物を立てて山砂を売っていますから、これを使うとよいでしょう。ただし、対象とする菜園の面積が広いと、かなりの出費になります。


1.4.植え付け

 さて、本格的に苗の植え付けです。
 双葉をもぎっても問題ないくらいに育った苗を使います。できる限り、日中に太陽光線がよく当たる場所に植え付けます。下が黒ポリマルチ、上がトンネル状に張った透明ポリマルチ、という構成にします。日中は少しトンネルの裾を開け、夜は閉めます。
 

もう、霜が降りる季節は終わった、という情報を得た方は、透明ポリマルチの除去にかかります。翌年も使うのなら、大事に畳んで収納しておきます。本来は、ポリマルチではなく、高価なビニルトンネルを使うのですが、生産農家と違って、サラリーマンでは代金の回収ができません。


1.5.生育  

植え付けると、数日、養生でもするのか、何事も起こらないように見えますが、6月頃になると、半日見ないと様子が違っているくらいに育ちます。葉も新しいものは、団扇よりも大きくなって、驚きます。イラガの幼虫がしきりに葉を齧るのですが、こんなやつに高価な農薬をぶっ掛けるのはもったいないので、割箸で摘み取って捨てるか、足で踏んでしまいます。
 

旺盛な生育を見せる巨大ヒョウタンですが、地這い作りが簡単でも、素晴らしい姿の巨大ヒョウタンを作りたいなら、棚を作るのを強くお勧めします。巨大ヒョウタンがいくつもぶら下がりますから、丈夫な棚がよいでしょう。農業用のプラ竹がいいのですが、1本あたり200円くらいするので、1回だけの栽培には、どこかから廃材をもらってきて、棚にするとよいと思います。


2.栽培

 2.1.摘心

できるだけ巨大な果実を望むのなら、1株当たりの果実数を1個に制限するので摘心が必要ですが、数多くの果実数を望むなら放任栽培でもかまいません。どちらがご自分にとって楽しいか、お好みの方をお選びください。筆者は畑の狭さと株数との関係で、大きさも数もほしい、というぜいたくな方針でしたので、放任としました。


2.2.灌水
 

土壌水分の多少で旨味が落ちたり、裂果したり、とトマトのようなことはないので、畝に黒ポリマルチを施してあれば、放任でよいでしょうが、日照りが続いて葉が萎れるようでは困りますので、その時は適宜灌水をしてください。


2.3.人工授粉

 広大な面積で栽培し、受粉に役立つ虻等の昆虫がたくさんいればよいのですが、なかなかそうはいかないのが現実です。スイカほど早朝でなくても良いので、雌蕊の先端に別株の雄花をなすり付けます。この時、受粉した日と天候を紙に書いて軸に付けておけば、次回からの栽培の有用なデータになります。筆者は自動車補修用のマスキングテープを使っています。安価な割には必要な日数以下では剥がれたりしませんので、重宝しております。
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2.4.追肥

 ヒョウタンは1日で1m近く蔓が伸びますし、受粉した果実も大きくなります。そのためには太陽光線と十分な肥料が必要です。果実の生育が進んでいくと、肥料が足りなくなってきますので、即効性の化成肥料を与えます。窒素肥料が多過ぎると、古い葉が次々に白い粉を撒いたようになる「うどんこ病」になりますが、大したことではないので、それ以上の追肥をしないくらいの処置でかまいません。


2.5.摘果

 

ヒョウタンは1個の果実から多量の種子が手に入りますが、どのような形状の果この形状がお好みなら、それをそのまま育てればよいのですが、たいていのひょうたん栽培者は、胴がキュッとくびれたいわゆるひょうたん型を望むはずです。そのばあいは、形の悪い果実をもぎってしまいます。あるいは、四角い木の箱の中に入れて実が実るかわかりません。よくあるのが、胴体部が丸っこく、その上部が先細の筒状になる果実です。、胴体が四角いひょうたんを作ることもできます。これまた、どちらかお好みで。


 ヒョウタンはウリ科の植物で、他のウリ科の野菜と同じように幼果を毛虫に齧られます。齧られても成長した果実の形状が変わってしまうわけではないのですが、果実表面に醜い傷跡が残りますので、農薬(殺虫剤)を撒いておきましょう。とはいえ、住宅地でプロ農家用の殺虫剤を撒くわけにもいきませんので、割高ですが、園芸用品店で野菜用殺虫剤のスプレー缶を買って幼果に撒くのがよいでしょう。

 

「スミチオン」は万能殺虫剤と言われるように優れた農薬ですが、スプレー霧を吸い込むと激しい咳が出てひどい目にあいますから、ご注意を。また、農薬ではないのに害虫対策ができるスプレーが販売されています。


2.7.ノウハウ

 

・巨大になりそうな果実は、蔓にロープを回して、果実が自分自身の質量で落下してしまうのを防止します。底部を布などで支えるのも良いでしょう。

 

・プロ農家のような広々とした畑を自由に使える人は多くないでしょうから、庭先などの畳何枚分かの土地に植えることになります。そうすると、15mも伸びる巨大ヒョウタンは3~5株しか植えられません。人工授粉をしましょう。



 3.1.収穫

 

葉も弦も干上がったら、もう、収穫の時期です。ひょうたんの場合、同じウリ科のスイカやメロンと違って、多少は収穫の時期が遅れても問題は起きません。逆に、形が出来上がったから、といって未熟果を収穫すると、種出しの段階で実が崩れてしまいます。


 3.2.種出し

 

完熟果が手に入ったら、種出しをします。

 

まず、ツルが付いていた部分にφ12.7mmの穴を開けます。これより小さい穴だと、種が引っ掛かって出てきません。安全な穴開けは、[φ2mm → φ5mm → φ10mm → φ12.7mm]のように、ドリル刃の直径を徐々に大きくしていき、仕上げます。最初からいきなり大きなドリル刃を使用すると、ドリル刃が滑って真ん中に通ってくれませんし、危険です。なお、φ10mmまでのドリル刃は大抵のホームセンターに置いてありますが、φ12.7mmの刃が在庫しているかどうかは微妙なところです。無ければ、何軒か回って探すか、注文になります。並みの木よりも硬いので、彫刻刀で孔を広げようとしても無理です。リーマーでは割れてしまう恐れがあります。


 巨大ヒョウタンを漬けておく容器があれば、その中に漬けて浮き上がらないように重しを乗せておきます。水は毎日補給しないと、どんどん減っていきます。水が減らなくなったら、内部が空洞になっていますから、腐って溜まった果肉と種を取り出します。

 

このヒョウタンの腐った果肉というのは、かなりの悪臭を持っていますので、近所迷惑にならないような場所と時間帯を選んでください。服に付着してしまうと匂うので、慎重に作業します。近年、この作業を無臭で素早くできる薬剤の「ひょうたんごっこ」が市販されていますので、これを使うのも手です。

 

内部の腐った巨大ひょうたんを上下逆さまにして振ると、腐った果肉と種子とが勢いよく飛び出しますので、液を浴びないように慎重に作業しましょう。1日で種出しが完了しなかった場合は、また少量の土と水とを入れて、翌日か翌々日に再挑戦です。

 

 巨大ヒョウタンに水を入れて上下に振ると、腰を痛める恐れがあるので、少し準備運動をしてから作業するのをお勧めします。

 

 なお、外皮は腐ってはがれてきますので、タワシなどを使って、きれいに落とします。


さて、完全に中身を出してしまうと、振っても音がしなくなるので、よくすすいで竹の棒に上下逆に挿して地面などに挿し込み、内部も乾燥させます。同時に、種子もきれいに洗って、来年用に干しておきます。




写真で見る巨大ヒョウタンの生育と加工


開花前日


開花


その2日後


その翌日


その翌日


その翌日


その翌日


その翌日


その13日後


その2日後


その2日後


その3日後


その4日後


その2日後


種を出すために穴をあける

ひとつの果実から採取できる種はこんなにたくさん
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