4. 部品作成
4.1.
ピックガード
市販のピックガードを使用するのがラクですが、好みに合うものができるまで、何枚も作りました。
また、部品の取り付け位置の確認用等に、薄い透明板でもう1枚作っておくと、後で便利です。
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色違いで何種類も試作した(白の間に各色挟み込み) |
3枚貼り合わせの上下を構成する白板の切り抜き |
どこまで自作するかは、材料レベルから考えて、三通りあります。
(1)
市販の硬質塩ビ板をそのまま加工する(単色)。
(2)
ピックガード用の塩ビ板を加工する
(3)
好みの色の組み合わせになるよう、塩ビ板を張り合わせ、それから加工する。
当然、(1)が最も安価にできます。ストラトキャスター用で¥700くらいの材料費でしょう。(3)は、オリジナリティを発揮できますが、かなり大変です(上記写真参照)。
私は、「白/赤/白」、というハデなのも作りました。市販のギターには、もちろんこんなものはありません。市販されているものは、厚さが2〜3mmで(ストラトキャスター用は2.25mm前後)、次のようなものです。
(1)
白一色
(2)
黒一色
(3)
白/黒/白
(4)
黒/白/黒
(5)
鼈甲/白/黒
(6)
パール/白/黒/白 (パールには各種あり)
くらいです。
素材としてアクリルミラーで作るときは、硬くて割れやすいので、細心の注意が必要です。材料も高価です。
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白/黒/白の3色貼り合わせ板 |
P/白/黒/白の4色貼り合わせ板 |
黒/白/黒の3色貼り合わせ板 |
ギターの組み立て完了までは、表面を保護するため、何らかの保護シートを貼っておきます。
4.1.1
まず、テンプレートを用意します。オリジナルを作図するか、市販のテンプレート図を利用するか、市販のギターのものを借りてくるか、B級品を安く買ってくるか、方法はいろいろあります。
4.1.2
3枚貼り合わせを作るばあいは、中心層がt=0.5mm、上下層がt=1.0mm、の板を使います
4.1.3
材料にマーキングし、ボールペン等で外形を描きます。テンプレートがメーカーオリジナル品の場合には、外形線よりも心持ち、小さめに仕上げることを考えておくとよいでしょう。
4.1.4
外形で、鋸刃の入らない隅部や凹部にドリルで孔を開けておきます。ネジ孔中心位置にポンチを打ってドリルビットの逃げを防ぎます。まずはΦ1mmくらいの小さな孔を開け、それから実際の孔径に合わせた直径のドリルビットを使用すると、位置がぴったり決まります。サラもみもします。
4.1.5
金ノコ等で外形を切り抜きます。塩ビなので専用カッターでもがんばれば切れますが、カッターは、一瞬でも気を抜くと深い傷が付いてオシャカになるので、やめた方がいいです。
4.1.6
可変抵抗器用の孔をドリルで開けます。
4.1.7
スイッチの溝を彫るため、鋸刃が入るようにΦ1mmのドリルで必要な孔を連続して開けます。溝とスイッチ取り付け孔位置が一直線になっていないと、スイッチ動作不良となります。
レバースイッチの取り付け孔と、レバーの動くスリットは、一直線になるように加工する スリットが太くなり過ぎるとカッコ悪い。 ガタガタのスリットはもっとカッコ悪い。 |
4.1.8
ピックアップ用の楕円孔を開けるため、両端の2箇所に孔を開け、リーマーで孔を大きく広げます。リーマーが無ければ、Φ3〜5mmくらいの孔を楕円の両端に沿って開けておきます。
4.1.9
金ノコ等で、ピックアップ孔を切っていきます。ドリルで全周孔開けしてもかまいません。
4.1.10
切り抜きが完了したら、ヤスリで整形します。
4.1.11
全周端面をC面カット(45度)して仕上げます。中心層から上だけをカットする方法もあります。
4.1.12
ピックガードの裏にはシールド板を貼ります。現在、楽器メーカーでは、可変抵抗器とスイッチの周辺にだけアルミ箔を貼っていることがほとんどです。今回は、確実なはんだ付けのできる銅箔を貼りました。
左側は粘着材付きの銅箔。 右側はピックガード形状にハサミで切り抜いた銅箔を貼り付けて、可変抵抗器とスイッチの孔を開けたところ |
4.2.
ナット作成
ネックのナット溝に合うナットを製作します(溝切りはまだ途中までで止めておくこと)。
市販の物を購入して取り付けるのがラクですが、素材が入手でき、せっかくなので自作してみました。
材料には、
(1)
プラスチック:普及品
(2)
牛骨:高級手工ギターに使用される
(3)
ミカルタ:Martinが純正使用
(4)
グラファイト:トレモロアーム多用プレーヤー向き潤滑性重視型
(5)
真鍮:解放弦との音質差が少なく、良音質ながら、加工作業が大変
等がありますが、昔から使われて実績があり、入手性、性能、外見、加工性が良いものを推奨します。
結局、牛骨を使用しましたが、弦ピッチに合わせた正確な溝を掘るのには、加工・測定に最適な工具と、かなりの忍耐力と集中力が必要です。
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牛骨ナット素材 |
製作途中のナット(左が1弦側) |
4.2.1
まず、弦ピッチを決めます。ふつう、7mmでよいでしょう。ナット幅に合わせたスケールも市販されています。演奏者の好みによっては、ピッチではなく、弦と弦との空間距離を等しくする場合もありますが、採寸が微妙です。
4.2.2
ネックのナット用溝の深さと幅と長さに合わせて、ナット素材を薄刃鋸で切り、大型ヤスリで外形を整えます。その後、手触りを良くするため、サンドペーパーで表面を滑らかにします。
4.2.3
溝底深さをフレット高さに近くするため、印を付けます。
4.2.4
溝切りには、ナットファイルが必須です。ナットファイルは、数種類の幅の専用薄刃ヤスリがセットになっているものが使いやすいです。私はアイバニーズ純正のナットファイルセットを使用していますが、種々のものが入手可能なようです。なお、切り始めにはごく薄刃のノコギリで始めることもあります。
4.2.5
溝底は丸く、使用する弦より溝幅はわずかに広く、溝深さは弦の直径より少し浅く、溝は指板と平行に、します。これをいい加減にやると、楽器として使えません。
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ナット溝の加工寸法概念図 |
4.2.6
出来上がったナットは、面取りをして角を無くします。そうしないと、演奏性に影響します。
余談ですが、牛骨をヤスリで削るときには、かなりの悪臭がしますので、屋外で作業することをお勧めします。また、真鍮でナットを作ると、ナットファイルが1回でダメになるという話があります。
Fender純正のように指板のナット用溝にRが付いているばあいは、専用のテンプレートが必要です。または、そういう底加工済のナット材を入手しないと、手加工でピッタリ合う曲線を作り出すのはかなり困難です。
4.3.
バックプレート
トレモロスプリングを収納したボディ裏のカバーのことです。これも市販品を使用するのがラクですが、どこにも売っていないものを作りたく、オリジナル品を作りました。
メタリックゴールドのアクリル板や、染色したボディに合わせた3色貼り合わせの塩ビ板です。ゴールドの色を決めるまでには、3種類のスプレーを試したくらいです。
こんなもの、別に凝らなければ、小学生用の下敷きでも切って張っておいても良い物ですが、わざわざ作ってしまうのは凝り性のサガです。
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シルバーST用のゴールド色 |
透明青ST用の「青/白.青」3枚貼り合わせ |
4.4.
ヘッド文字入れ
部品の作成とは言えませんが、文字入れです。ヘッドに何も絵柄がないのは寂しいものです。
ここは一発、凝った文字をとがんばったのですが、ヘッド面へのバロック文字のインスタントレタリングの乗りが良くなかった(文字の構成要素が細過ぎる)ので、普通のフォントにしました。ちょっと残念!
ちなみに、いつも「商標」にしている
Geist Guitars というのは、独英語の混成で、日本語にすると、「幽霊ギター製作所」となります。
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4号機の黒一色レタリング |
5号機の青と黒、フォントも別 |
6号機、緑と黒、別フォント |
4.4.1
まず、アイディアを作成します。できればPC上でシミュレーションします。
4.4.2
インスタントレタリングの乗りを良くするため、ヘッド面の油分を除去します。
4.4.3
必要なインスタントレタリング文字が完全に剥がれてキレイに転写できるよう、寒い時にはドライヤーなどでヘッドを温めます。
4.4.4
インスタントレタリング文字並びの下ライン上や両端にテープを貼る等の位置参照工作をします。
4.4.5
慎重に1文字ずつ転写していきます。少しでもズレたら、サッサとやり直します。
4.4.6
透明ラッカースプレーを、遠く離して何回も吹き付けます。
4.4.7
インスタントレタリング文字の厚さよりも塗料が乗ったら、#400サンドペーパーで少しずつ研磨して、#600、#1000と仕上げます。