1. 準備

作業開始前には、いろいろ準備と用意が必要です。

 

1.1.       デザイン

まず、形状を決定します。

         四角い材木から必要な形状を作っていく方法(オリジナル形状用)

         既に形状切削加工の済んだボディを購入する方法

と、二通りありますが、本稿は後者で説明します。

ボディ用アルダー材

ボディ用アッシュ材

現在、容易に入手できる加工済ボディは、

(1)     ストラトキャスター®型(略称ST)

(2)     テレキャスター型® (略称TE)

(3)     プレシジョンベース®型(略称PB)

(4)     ジャズベース®型(略称JB)

なので、必然的に上記の型か、その変形か、組み合わせ、ということになります。

加工済みボディST(アルダー材/アッシュ材)

加工済みボディTE(アルダー材/アッシュ材)

 

ネックは、信頼できる製品を購入したほうが良いでしょう。

演奏に使えるネックを作るのは簡単ではなく、十分な知識を得て木工などの修行を積んでからです。

ネック用材

ST用ネック

汎用ネック

フェンダー系の主なギターでは、ネックの材質はメイプル(楓)であり、指板としてローズウッドやエボニー等の別木材を貼ったものと、メイプル1本ものがあります。メイプル薄板を貼ったものもあります。

材質により手触りが異なり、一長一短があるので、好みで決めます。一般に、エボニーは高級材です。

 

1.2.       ピックアップ

エレキギターにとって、ピックアップは音質を決める要素の大きい至って重要な部品です。

シングルコイルか、ハムバッキングか、いくつ搭載するのか、どの品種、また、その組み合わせは?

これを考えているのが、一番楽しい時間かもしれません。

ピックアップの例

(Seymour Duncan JB Jr.)

ピックアップ構造例

(鉄芯の周りにコイルが巻かれる)

Seymour Duncan の添付説明書

なお、可変抵抗器の抵抗値ですが、シングルコイルピックアップには250kΩ、ハムバッキングピックアップには500kΩを使用するのが標準です。

 

1.3.       塗色

できあがったギターがどんな色かで、製作者の品性が知れたりします。

また、色艶で、仕上げの良さ悪さが一目瞭然です。一般に、塗装表面は鏡のように仕上げなければなりません。ただし、ネック等は故意に艶消しに仕上げることがあります。

ボディだけでなく、ペグヘッドにも塗装すると、また違う雰囲気が出せます。

木目を活かすには、木生地を染色して、透明塗料で仕上げます。キズの無いボディが必要です。

 

1.4.       ボディ材

ボディ材に何を採用するかも、十分に考えなければなりません。

楽器用として入手できるのは、これらの材質です。一般のDIY店で販売している木材は使用できません。

(1)      アルダー Alder

(2)      アッシュ Ash

(3)      ポプラ Popular

(4)      マホガニー Mahogany

(5)      メイプル Maple

それぞれ、音色、外観、加工性、などに特徴があり、一概にこれが最高、とは言えません。

たとえば、アルダーは材質が均一で散孔材でないため、目止めも不要で、適度に柔らかいため、加工性が良く、音も悪くないです。しかし、木目がはっきりしないので、木目を活かした塗装には向きません。

反面、アッシュは、派手な木目が出ているため、透明色に塗ると、引き立ちます。シングルコイルピックアップに向いている音質、ともよく言われます。しかし、散孔材で不均一材質のため、目止めと下塗りが必須です。

アルダー

アッシュ

ポプラ

マホガニー

メイプル

バスウッド

ローズウッド

エボニー

セン

スプルース

 

1.5.       その他の部品

ブリッジ、糸巻き(Tuning Machines)、弦、各種ネジ、出力ジャック、可変抵抗器(ポット)、スイッチ、ツマミ、各種固定金具などが必要で、これらは購入します。可変抵抗器は、回転トルクの軽い楽器専用品を使います。

ブリッジと糸巻きのコストをケチると、演奏性が悪い楽器になってしまうのでご注意を。

また、スイッチと可変抵抗器、ツマミ類には、日本仕様とアメリカ仕様とがあり、寸法互換性がありません。

ST用スタンダードブリッジ

ST用Wilkinsonブリッジ

Floyd Rose ブリッジ

オールド型糸巻き

Gotoh 510型糸巻き

Schaller M6mini 型糸巻き

ストラップボタン(ネジ付き)

スイッチ取り付け用ネジ

ネック取り付け用ネジ

ピックガード取り付け用ネジ

ピックアップ用ネジ各種

出力ジャック

(右はステレオ形式)

ジャック取り付け金具

ネック取り付け金具

ピックアップ切り換えスイッチ

(金メッキ接点品がお勧め)

スタンダード弦ツリー

(一般的な型式)

オールド弦ツリー

(お勧めできない型式)

弦リテーナー

(低摩擦抵抗のお勧め品)

ストラップボタン

(一般的な型式)

Schallerセキュリティロック

(着脱式ストラップボタン)

可変抵抗器

(Volume、Tone)

Volume・Tone用ツマミ

(これらはST用)

スイッチ用ツマミ

(これらはST用)

(好みで選択する)

 

1.6.       あると便利な工具類

ルータービット

ドリルビット(木工用)

カムクランプ

ノギス

ナットドライバー

ナットファイル(専用極薄ヤスリ)

弦ピッチ用定規

トレモロバネ工具

糸巻き回し

(1)     ルータービット:ピックガードを自作する時に、外形の曲線を削りだすのに便利です。ただし、慣れないと危険な道具でもあります。

(2)     ドリルビット(木工用):これ無しでは、始まりません。ボディへの孔開け、ピックガード作成に必須。トレモロブリッジのバネ端を繋ぐ金具を固定するネジのネジ孔を開けるには、通常の4倍くらい長いドリルビットが必要となります。

(3)     カムクランプ:ギター製作といったら、この道具は必出。何でも一時固定できます。大小2種×数本を持っていると便利です。

(4)     ノギス:ナット自作を始め、各部寸法、外径、内径、厚み、深さを測るのに必携です。

(5)     ナットドライバー:ペンチでジャックのナットを締めるとキズだらけになりますし、必要トルクで締められません。このドライバーで確実に締めましょう。

(6)     ナットファイル(極薄ヤスリ):ナットの自作には無くてはならないヤスリ。他の薄型ヤスリや薄刃ノコギリでの代用は不可です。

(7)     弦ピッチ用定規:ST系ギターなら、ナット部での弦ピッチは7mmにしておけば、まず間違いはありませんが、ネックに合わせてキッチリ作りたければ、この定規がお勧めです。

(8)     トレモロバネ工具:トレモロブリッジを引っ張っているバネを固定金具にまで引っ張ってはめるための専用工具。プロでなければ、わざわざ買わなくても、太い針金で作ればよい道具です。

(9)     糸巻き回し:これを使って弦を張ったり、緩めたりすると、非常にラクができます。$2くらいで買えるので、持っていないと損です。

 



0.概要  1.基本構想  2.木工  3.塗装  4.部品製作  5.組込  6.調整  7.あとがき  8.参考資料  9.付録  補遺

 

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